2016年11月29日

ヨーロッパ諸国
特許・実用新案
条約
判例紹介・解説

英国が統一特許裁判所協定にゴーサインを出す

  2016年11月28日、英国政府は、欧州統一特許裁判所協定の批准に向けた準備をする旨をプレスリリースで正式に公表しました。
https://www.gov.uk/government/news/uk-signals-green-light-to-unified-patent-court-agreement

   欧州統一特許裁判所の中枢を担う中央部のうち、フランスのパリに設置される本部、ドイツのミュンヘンに設置される機械分野担当支部とともに、ロンドンには化学・生命科学分野を担当する支部が設置されることが決まっていました。しかし、英国は、2016年6月23日の国民投票により欧州連合(EU)を離脱(BREXIT)することになりました。

   もともと欧州統一裁判所のスキームはEUの枠組みとは異なるため、BREXITと直接の関係はないとしても、BREXITの影響による制度発足遅延が懸念されていました。

   今回、英国が統一特許裁判所協定の批准に動き出せば、未批准のドイツ等も批准に向かうものと想定され、2017年半ばにも制度が開始する可能性も出てきました。

   以下、英国政府公表内容の仮訳を掲載します。

*****

英国政府は、統一特許裁判所協定(Unified Patent Court Agreement:UPCA)を批准する準備を進めている旨を認めた。

これは統一特許(unitary patent)及び統一特許裁判所協定(UPCA)を実現するプロセスの一部である。この新たな体制によれば、企業はその特許権を欧州内でより効率的に、単一の特許及び単一の特許裁判所を通じて、保護及び行使することが可能となる。

統一特許裁判所により、英国企業はその創作及び発明を、他国の企業による非合法な盗用からより容易に保護することが可能となるであろう。

英国知的財産権庁の Baroness Neville Rolfe 長官は以下の様に述べる。

「この新たな体制は、欧州内での発明の保護を必要とする企業に、新たな選択肢を提供するであろう。この選択肢を実現するべく、英国は欧州のパートナーと共に準備を進めてきた。
首相も述べているように、英国はまだ欧州連合(EU)の一員である以上、完全且つ積極的な役割を果たす必要がある。欧州連合との新たな協定を交渉するに当たり、できる限りよい条件を探っていくつもりである。交渉の成果には、緊密な友好国や同盟国が享受する成熟した協調関係を反映させたい。商品やサービスの自由貿易も含めたい。英国企業には欧州単一市場との貿易及び同市場内での活動に最大限の自由を確保したいし、欧州企業にも英国内で同様の自由を保障したい。
しかし、批准の準備を進めるという今回の決定は、今後のEUとの交渉における英国の目的や地位を先んじて確保しようとするものと解すべきではない。」

本日の発表に続き、英国は今後数ヶ月かけて批准の準備を続ける予定である。統一特許裁判所(UPC)をできるだけ早期に実現させるべく、準備委員会(Preparatory Committee)と協力していく。

*****