1. 実体審査が開始される前に出願が取り下げられれば審査手数料全額を払戻し
♦ 従来、審査部が出願を担当した後、実体審査の開始までに出願が取り下げられた場合、審査手数料の75%が払い戻されていましたが、規則改正により全額が払い戻されることになりました。
♦ 2016年7月1日以降に出願が取り下げられた場合に適用されます。
♦ 現行の審査手数料は、1635ユーロ(約184,000円)のため、今回の改正後は従来の75%(約138,000円)よりも約46,000円多く払い戻されることになります。これはEPを指定したPCT出願(Euro-PCT)も同じです。
♦ 欧州特許庁(EPO)は、今回の改正に合わせ、出願取下げによる審査手数料の全額払戻しの機会を確保するため、実体審査開始予定日を出願人に通知するサービスを導入しました。
♦ この通知(様式2919)は少なくとも実体審査開始予定の少なくとも2ヶ月前までに送付されます。
♦ ただし、現時点ではすべての出願について通知されるわけではありません。今後、対象とされる出願は順次拡大される予定とのことです。
2. 2016年11月1日以降は実体審査開始後の取下げでも半額を払戻し
♦ 2016年11月1日以降は、実体審査開始後であっても、審査部による第1回指令(EPC94条3項)に対する応答期間経過までに出願を取り下げれば、審査手数料の50%が払い戻されます。
♦ このような払戻しの制度は従来はありませんでしたが、2016年11月1日以降に実体審査が開始される出願について適用されます。
♦ なお、上記第1回指令が発行されなくても、特許付与予定通知(規則71条(3))があった後は払戻しの対象になりません。
3. 実務上の留意点
♦ 今回の手数料規則改正は、審査手数料の払戻し範囲を拡大して権利化が困難あるいは不要な出願を取り下げる機会を出願人に積極的に付与すると同時に、審査負担を削減するものです。
♦ 出願の続行の是非の判断を早期に行うことにより審査手数料全額の払戻しが受けられるようになりますので、サーチレポートに基づく審査係属可否の判断が重要になります。
♦ 現時点では実体審査開始予定日の通知はすべての出願について行われるわけではないので、通知の有無にかかわらず、出願取下げの判断を早期にしておく必要があります。
♦ 2016年11月1日以降に実体審査が開始される出願については、OAの内容を確認して取下げの是非を検討できるようになり、この場合でも審査手数料の半額が払い戻されるため、コスト削減に一定の効果が期待できます。
以上
2016年8月17日
青和特許法律事務所
IP情報室