2019年06月24日

日本
特許・実用新案
判例紹介・解説

知財高裁大合議-特許法102条2項及び3項-

知財高裁の13件目の大合議事件となる平成30()10063号 特許権侵害差止等請求控訴事件につき、令和元年67日に判決がなされました。本事件の主な争点は、①特許法1022項の侵害行為により侵害者が受けた利益の額、②同項の推定覆滅事由、及び③特許法1023項の実施料相当額についてです。判決では、争点①について、侵害行為により侵害者が受けた利益の額とは、「原則として、侵害者が得た利益全額であると解するのが相当」であり、「侵害者の侵害品の売上高から、侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額」であること、そして、「その主張立証責任は特許権者側にある」ことを判示しました。争点②の推定の覆滅については、「侵害者が主張立証責任を負うものであり、侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害する事情がこれに当たる」とし、そのような事情としては、同1項ただし書きの事情と同様に、市場の非同一性等を考慮することができると判示しました。そして、争点③について、侵害者に対して定められる実施料率は、「通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべき」とし、通常の実施料率の相場だけでなく、侵害の態様等の「訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである。」と判示しました。本稿では、本判決の概要を紹介します。

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